技術とか戦略とか

IT技術者が技術や戦略について書くブログです。

リーダーシップ状況論の実践

リーダーシップ状況論(組織の成熟度に適したリーダーシップの分類)については、以前に情報処理技術者試験対策として記事にしました。
 
情報処理技術者試験対策「リーダーシップ状況論」

https://akira2kun.hatenablog.com/entry/2018/07/10/234418

 
試験対策としては上記の記事のみで良いのですが、今回の記事では実務に活かしやすくするように、もう少し具体的なことを補足します。
 
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最も成熟度が低いaの状態というのは、構成員のスキルも自主性も不足している状態のことです。
もう少し具体的に言うと、成果を出すために何をすれば良いのかわからない状態や、そもそも成果を出すための意欲が低い状態のことを指します。
このような状態の組織を引っ張る上では、成果を出すことを最優先で考え、成果を出すための道筋を示すことができるリーダーが求められます。
道筋を示す上で、リーダー自らが判断を行う必要があるので、リーダー自身にもプレイヤーとしてのスキルが求められます。
リーダーのワンマンプレイのようになるので人間関係に軋轢が生じることもありますが、この段階では副作用としてある程度受け入れざるを得ません。
 
成熟度が少し高くなり、bの状態になると、構成員にスキルが身に付き始めます。
この状態になると、末端の細かい判断や作業は構成員自らできるようになります。
まだまだリーダー自ら動かなければならない場面も多いですが、このあたりからは構成員に任せる仕事の範囲を徐々に広げ、構成員と良い人間関係を築くことも考える必要が出てきます。
あまり長い間リーダーが出しゃばっていると、構成員の自主性が育つのを阻害し、次の成熟度へ進むのが難しくなります。
 
成熟度が更に高くなり、cの状態になると、構成員に自主性が育ち、自ら考えられるようになります。
この状態になると、これまでリーダーが行っていたような判断を構成員自ら行うようになりますし、その上で足りないスキルがあれば構成員自ら努力して身に付けるようになります。
この段階になれば、リーダー自ら動く必要はなくなります。構成員が気持ちよく仕事ができるように(このリーダーの下で働きたいと思ってもらえるように)、人間関係のメンテナンスに注力するのが有効になります。
 
成熟度が最高に高まり、dの状態になると、構成員自らリーダーシップを取るようになります。
この段階に到達すると、リーダーは人間関係のメンテナンスをする必要もなくなります。
リーダーの仕事は、構成員に任せて見守るというものになります。
 
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IT業界で言うと、aの状態の組織というのは、前任者が逃げ出して残された構成員が右往左往している組織や、組織再編や短納期化でこれまで頼っていた社内プロセスを見直さざるを得なくなった組織のことを指します。
この状態の組織では、十分な能力や経験を持つ者がリーダーとなり、リーダー主導で作業計画や品質強化を行う必要がありますし、リーダー自ら設計や開発に関わる必要もあります。
炎上プロジェクトの火消し役、というのもここに含まれます。
 
bの状態の組織は、プロセスが正常に回り始めた組織と言うことができると思います。
この状態になると、構成員がプロセスに沿って自ら仕事ができるようになります。
リーダーは、構成員がプロセスに沿って仕事ができるようにサポートするのが主な仕事になります。
 
cやdの状態の組織は、アジャイル的な組織と言えると思います。
アジャイル的な組織になると、重厚長大なプロセスに頼らずとも、各々の構成員が高い技術力により適切な判断をするようになります。
この状態になると各々の構成員がリーダーシップを取るようになるので、リーダーの存在感が薄くなるのですが、強いて言えばリーダーの仕事は構成員のモチベーションを高く保つ(リーダーの下で仕事したいと思わせる)ことが主な仕事になるでしょう。
 
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成熟度毎で求められるリーダー像が変わってくるので、どの成熟度で力を発揮するのかは個人差が出てくると思います。
 
ちなみに、私の場合は、aの混沌とした状態でリーダーに任命され、正常化する(bの状態になる)につれて他のリーダーへバトンタッチするような形になることが多いです。
プロセスやルールが無くとも適切な判断を行えるように鍛えているので、その成果を発揮できるaの状態の組織でのリーダーというのは個人的に楽しかったりします。