技術とか戦略とか

SIerで証券レガシーシステムを8年いじってからSESに転職した業務系エンジニアによる技術ブログ。

効率的な会議の進め方

仕事を進める上で会議は欠かせません。
 
例えば、以下の目的で会議を行います。
・管理表やチケットで管理されたタスクの棚卸
・要件や作業状況等のヒアリング
・問題に対する対応案の検討
・成果物に対するレビュー
 
会議を上手く運営すると仕事はスムーズに進みますが、会議には複数の人の時間を取らせてしまうという問題もあるため、効率的な運営が欠かせません。
ここでは、会議を効率的に進めるために何を心がければ良いのかを書いていきます。
 
1.会議を開催するべきか考える
 会議を行う利点として、
 リアルタイムに相互にコミュニケーションが取れるというものがあります。
 逆に言うと、その利点を活かせないのであれば、
 会議を行わずに、テキストベースでやりとりして各自が作業した方が効率が良いです。
 
 リアルタイムでの相互のコミュニケーションが必要になる場面としては、
 他の人の反応により結論が変わる可能性や頻度が高い場面になります。
 例えば、要件のヒアリングは話を聞くまでどのような話(結論)になるか
 予測するのか難しいので、会議を開催する必要性が高いです。
 逆に、プログラムの不具合の調査は、
 不明点が見つからない限りは自分一人で結論を出すことができるので、
 会議を開催する必要性が薄いです。
 
 このように、まずは、会議を行う必要があるかどうかを考えるべきです。
 
 なお、この時点で誰とリアルタイムにコミュニケーションすれば良いかが見えるので、
 会議に召集する必要がある参加者も見えてきます。
 
2.下準備を行う
 会議を行うことに決めたら、次に下準備を行います。
 会議中に自分一人で行うべきタスクを実施してしまうと時間がもったいないので、
 そのような作業は予め実施しておく必要があります。
 
 例えば、タスクの棚卸を行うのであれば、
 自分が把握しているタスクは全て管理表やチケットとして起票するべきです。
 また、成果物のレビューを行うのであれば、
 レビュー対象の成果物を叩き台の形で良いので一旦作成する必要があります。
 
 他の方に準備を依頼するのであれば、先にその旨を通知すると良いでしょう。
 準備の依頼が必要ないように思える場合についても、
 予め準備したいと考える参加者がいるかもしれないので、
 その場合お会議の議題やアウトラインは先に通知した方が望ましいです。
 
 なお、会議開催までに事前準備を完了できる見込みであれば、
 先に3を実施して時間を押さえてしまった方が良い場合もあります。
 
3.時間を設定する
 会議の準備の一貫として、参加者の時間を押さえる必要があります。
 
 特に、組織の上位者は会議に呼ばれることが多く、
 空いていない時間が多いので、上位者から先に押さえるのがポイントになります。
 
 会議の時間を押さえるのが難しいのであれば、
 時間設定は先に行ってしまった方が良いです。
 会議への参加が必須ではない方については、
 任意参加という形で会議が存在することだけ通知し、
 参加するかどうかを判断してもらい、
 参加しないにしても後で結果を展開する、
 という形にすると良いでしょう。
 
4.会議を実施する
 ここまで準備ができていれば、会議の目的も内容も明確なので、
 準備時に考えていた通りに会議を進めるだけです。
 
 ここで重要になるのは、会議の中で結論を決めることです。
 より具体的に言うと、
 誰が何をやるのか、という次のアクションを決める必要があります。
 
 例えば、要件のヒアリングであれば、
 ヒアリング結果を元に誰がいつまでに次の提案を行うのか、
 ヒアリングしきったのであれば誰がいつまでに要件定義書に書き展開するのか、
 ということを決める必要があります。
 また、成果物のレビューであれば、
 誰がいつまでにレビューの指摘事項に対応するのか、を決める必要があります。
 
 会議結果を忘れないように、
 議事録のようなドキュメントに残し展開するのも重要です。

相手の拘りに合わせて柔軟に計画を変更する

計画を策定する場合、自分に最終的な決定権がないという状況が往々にして起こり得ます。
具体的には、取引先や上司、先輩、プロパーの決定に従わざるを得ない、ということは少なくありません。
 
このような場合、自分が推す案に拘り、無理に押し通そうとするのは賢い判断ではありません。
組織の中で仕事をするにあたっては、自分の方が折れて相手に従う方が賢いです。
 
しかし、自分が異なる案を推しているということは、相手が決定した案には何かしらの問題があることに気付いているはずです。
相手の決定を覆さない形で、問題を解消する別の方法を提案するのが賢い判断になります。
 
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例えば、データベースの設計方針で、外部キーを使うかどうかを検討しているとします。
外部キーを使用した場合、データ不整合(親テーブルに存在しない項目が子テーブルに存在する)をデータベースの機能により防ぐことができます。
しかし、テストデータを作成する時やデータを修正する時に、子テーブルを先に挿入・更新できなくなるケースがあり、利便性が下がります。
 
ここで、自分が外部キーを使用するべきと考えているのに対して、決定権がある相手は外部キーを使用するべきではないと考えているとします。
この場合、相手に合わせる形で外部キーを使用しない方向で考えつつ、外部キーを使わなかった場合の問題を解消する方法を別に考えるのが賢い判断です。
 
子テーブル・親テーブルを挿入・更新・削除した際に、最終的にデータ不整合を防ぐことができれば良いので、設計・製造・テストや運用の担当者向けに、どのテーブルとどのテーブルが親子関係にあるのか、親子関係を示すキー項目はどれか、というのをドキュメントに残し、整備・展開し、各自で気を付けてもらう、という方法が考えられます。
また、各自で気を付けても、ミスによりどうしても不整合は発生し得るので、定期的に親子関係が失われたデータを発見するプログラム・スクリプトを走らせるのも良い方法かもしれません。

ディベートから学ぶ案の検討の方法

仕事をする上では、システムの計画や設計等で案を検討することがあります。
検討する際に、ディベートの考え方を用いると、肯定・否定に偏ることなく案を検討しやすくなります。
 
この記事では、案を検討する上で参考になるディベートの考え方を簡単に説明したいと思います。
 
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1.案の具体化
案を検討する上では、案を具体化する必要があります。
(具体化しないまま議論を進めても、案のメリットもデメリットも不明確になります)
 
例えば
「あるJavaの保守開発の現場で、コーディング規約を新たに導入するべきである」
というテーマがあるとします。
 
このテーマを具体的な案にすると、以下のようになります。
・「オブジェクト倶楽部Javaコーディング標準」をコーディング規約として導入する
・コーディング規約をドキュメントとして開発者へ広める
・レビューの際にはコーディング規約通りかどうかを確認する
 
2.案のメリット・デメリットの組み立て
案には、導入することによるメリットとデメリットがあります。
具体的な案が決まったら、メリットとデメリットを組み立てる必要があります。
 
メリットとデメリットは、以下の要素が含まれる主張を掛け合わせることで、
組み立てることができます。
 
■メリット
・内因性 …案を導入していない現状で問題が発生しているという主張
・解決性 …案を導入することで問題が解決するという主張
・重要性 …問題を解決することは重要であるという主張
 
■デメリット
・固有性 …案を導入していない現状では問題がないという主張
・発生過程…案を導入することで新たに問題が出るという主張
・深刻性 …新たに発生する問題が重大であるという主張
 
コーディング規約の例で考えると、以下のような主張が考えられます。
 
■メリット
・内因性 …ソースファイル毎でソースの書き方がバラバラである
・解決性 …コーディング規約により、今後改修されるソースは書き方が統一される
・重要性 …ソースの書き方が統一されれば可読性が高まり不具合が減る
 
■デメリット
・固有性 …現状では1つ1つのソースファイル内では書き方が統一されている
・発生過程…改修時に規約に従うと、ソースファイル内で書き方が不統一になり得る
・深刻性 …ソースファイル内で書き方が不統一になることで逆に可読性が低下する
 
3.主張を支えるための根拠
主張を組み立てることでメリット・デメリットを構成できますが、
その主張自体が正しいかどうかを示す必要はあります。
それを示すものが、根拠です。
 
根拠としては、書籍や記事、調査結果といったものが考えられます。
 
例えば
「現状では1つ1つのソースファイル内では書き方が統一されている」
と主張したい場合は、
色々な機能からソースファイルをピックアップし、調査し、例示すると良いでしょう。
 
4.メリットとデメリットを比較するための価値基準
メリット・デメリットを組み立て、主張が疑わしくない(根拠がしっかりしている)、
ということが確認できたら、次はメリットとデメリットを比較する必要があります。
メリットの方が大きければその案は採用するべき、
デメリットの方が大きければその案は採用するべきではない、
となります。
 
メリットとデメリットの大きさの比較は主観に頼らざるを得ない場合が多く、
判断が難しいです。
そこで重要になるのが、「価値基準」です。
議論の対象となっている組織で何を大切にしているのかを明確にすることで、
メリットとデメリットの比較が容易になります。
 
例えば、前述のコーディング規約の例の場合、
長期的に見た場合のコードの可読性を重視するのか、
近視眼的に見た場合のコードの可読性を重視するのかで、
判断が変わってきます。
自組織が前者の場合はメリット、後者の場合はデメリットの方を重視するべきでしょう。
 
5.返しの案と代替案
デメリットが発生しないようにするための返しの案を併用することで、
デメリットが発生しなくなり、案を採用する方向に持って行ける場合があります。
逆に、メリットのみが発生するような代替案を用意することで、
代替案が一番良いという結論に持って行ける場合があります。
より議論を深めるのであれば、返しの案や代替案も考えた方が望ましいです。
 
例えば、前述のコーディング規約の場合
・ソースファイル内の書き方の統一性が失われる場合は規約を適用しなくて良いとする
という返しの案を併用することで、デメリットの発生を防ぐ効果を期待できます。
 
また、代替案として
・色々なソースの書き方について教育し、色々な書き方に慣れてもらう
という案を採用することで、
デメリットがある元々の案を採用しなくても良いという結論になるかもしれません。
 
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このように考えて案を検討するのは面倒かもしれません。
実際の仕事では、論理的に案を検討するよりも、スピード感を持って判断する方が重要かもしれません。
 
しかし、誤った判断をしないために、論理的に考える場合はこうなる、というのは知っておいて損はないと思います。
特に、メリットとデメリットの両方を検討する、という視点は重要になるでしょう。

ゲーム理論を現実世界へ適用するにあたっての問題点

この記事は「ゲーム理論:物事をゲームとして正しく認識するための方針」を焼き直したものです。
 
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ゲーム理論は話だけ聞くと簡単そうに見えますが、実際に適用しようとするとある壁にぶつかります。
その壁とは、「適用対象をゲームとして正しく認識することが困難」という壁です。
ゲームとしての認識が誤っていると、ゲーム木や利得表を正しく書くこともできなくなり、そこから導き出される分析結果も誤ったものになってしまいます。
 
今回の記事では、この問題について例を挙げて説明し、どのような落とし穴があるのかを詳しく書いていきます。
 
ゲーム理論のおさらい】
ゲーム理論については、下記の記事に簡単に書いています。
情報処理技術者試験対策「ゲーム理論」 (https://akira2kun.hatenablog.com/entry/2018/07/10/234859)
 
ゲーム理論の3つの前提条件】
ゲーム理論で分析を行うためには、以下の3つの前提条件が必要になります。
「適用対象をゲームとして正しく認識する」を具体的に言うと、「以下の3つの前提条件を正しく設定する」ということになります。
 
・利害関係のあるプレイヤーの洗い出し
ゲーム理論とは、自分が選んだ選択肢と相手が選んだ選択肢の組み合わせで結果がどのように分岐するのかを分析する理論である。
そのため、まずは結果に影響を与えるような利害関係のあるプレイヤーを洗い出す必要がある。
 
・各プレイヤーが持つ選択肢
前述の通り、ゲーム理論とは選択肢を選んだ結果を分析する理論であるため、その「選択肢」を洗い出す必要もある。
 
・選択肢を選んだ結果得られる利得
ゲーム理論における「結果」は「利得」と呼ばれているが、その利得の大小も定義する必要もある。
 
【前提条件を設定する難しさ】
上記の前提条件は、ゲーム理論の例題では自明であり、スポーツ・ボードゲームコンピューターゲーム等でもルールとして自明に近い形で提示されています。
しかし、現実世界の問題では前提条件は自分で設定する必要があり、スポーツ・ボードゲームコンピューターゲーム等に対してゲーム理論で厳密に分析する場合にも前提条件を疑う必要があります。
 
これらの前提条件を設定するのは意外と難しいです。
以下では、ゲーム理論の代表的な例題である囚人のジレンマhttps://d.hatena.ne.jp/keyword/%E5%9B%9A%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9E)での例を挙げて説明します。
 
・利害関係のあるプレイヤーの洗い出し
一見利害関係がありそうなプレイヤーは実は利害関係がなかったり、逆に意外なプレイヤーと利害関係があったりします。
囚人のジレンマの例では、相手の囚人の行動が自分の量刑に影響しないのであれば、相手の囚人をプレイヤーとして仮定するのは不適です。
また、被害者の気分で量刑が変わるのであれば、被害者をプレイヤーとして見立てるべきです。

 

・各プレイヤーが持つ選択肢
発想を膨らませると、選択肢も色々なものが想定できます。
囚人のジレンマの例では「黙秘」「自白」のみが選択肢として与えられていますが、囚人の能力や状況次第では「賄賂支払」「脱走」といった選択肢も想定する必要があります。

 

・選択肢を選んだ結果得られる利得
各プレイヤーの目的や価値観、心理的バイアス、外部から与えられた要素等によって、実際に感じる利得は変化します。
例えば、囚人のジレンマにおいては、プレイヤーには「刑を免れる」以外の目的はないことが前提として置かれています。
しかし、現実世界では「正義の主張」という目的が潜んでいる可能性があります。
この場合、自白をすることで「正義の主張」という目的を果たすことができ、それがプレイヤーの主観的な利得に影響を与え、そのプレイヤーにとっては自白一択になる可能性があります。

 
ゲーム理論を現実世界で用いる上での心構え】
ここまでで述べたように、ゲーム理論の前提条件の設定には難しさがあります。
 
ゲーム理論を現実世界で用いるためには、現在のゲームがどのようなゲームなのか、メタ的な目線で分析することが欠かせません。
囚人の量刑を決める場面で常に囚人のジレンマが発生するとは限りません。
先入観に捉われず、現在の状況をゲームに置き換えるとどうなるのか、というのをその場その場で考える必要があります。
 
その上で、ゲームを作り変える、という視点があるとより有効にゲーム理論を活用することができます。
例えば、囚人のジレンマの例で言うと、予め財を成しておけば、「賄賂支払」という選択肢が選択肢が生まれ、相手の選択肢に関わらず無実を勝ち取れるゲームを作り出すことができます。
どのようにゲームを作り変えれば良いのか、を考える上でも、ゲーム理論の現状分析は役に立つと思います。

ニーズとウォンツを意識することの重要性

「ニーズ」「ウォンツ」とはマーケティング用語であり、人間が何かを求める時の行動を分類したものです。
それぞれ、以下の意味で使われます。
ニーズ …生活を送る上で感じる満ち足りない状態
ウォンツ…ニーズを満たすための具体的な手段
 
例えば、「本棚を作るためにドリルを求める」という行動については、ニーズとウォンツをそれぞれ以下のように分類できます。
ニーズ …木の板を加工して本棚を作っているが、穴が無いために組み付けができない
ウォンツ…穴を開けるためのドリルが欲しい
 
人間の行動を「ニーズ」と「ウォンツ」に分類することで、効率的な戦略を探しやすくなることがあります。
例えば、以下のような例が挙げられます。
 
マーケティングの例
観測しやすいのは具体的なウォンツですが、ここに着目してしまうと競争に巻き込まれやすくなります。
しかし、裏の目的であるニーズに着目すると、競争を避けやすくなります。
 
例えば、婚活市場では、女性は年収の高さを男性に求めることが多いです。
男性側の視点では、年収の高さの勝負を苦しく感じる人が多いと思います。
そこで、「年収の高さを求める」というウォンツの背景にあるニーズを考えてみると、「安定した結婚生活を送りたい」というのがニーズであることが多いです。
このニーズに着目し、堅実さをアピールすることで、年収の高さの勝負を避けやすくなる可能性があります。
「年収」のようにわかりやすい数字が欲しいのであれば、「年間の貯蓄額」をアピールすると良いかもしれません。
 
・交渉の例
交渉時にお互いのウォンツが競合していると、お互いに奪い合いの関係になり、win-loseになったり交渉がまとまらなくなったりして、お互いに利得を得ることができなくなります。
そこで、ニーズに着目してウォンツをずらし、競合を解消すれば、交渉がまとまりお互いに利得を得ることができるようになります。
 
例えば、家の売買では、高く売りたい売り手と安く買いたい買い手でウォンツが競合しがちです。
高額で売買すれば買い手が損しますし、低額で売買すれば売り手が損します。
そこで、お互いの状況からニーズを考えることで、お互いのウォンツをずらして競合関係を解消できる場合があります。
例えば、売り手のニーズが「早く資金を手に入れて次の家を購入するための頭金に回したい」、買い手のニーズが「手元にある老後資金をなるべく溶かさずに家を買いたい」である場合、売り手のウォンツを「低額でも良いからすぐに現金化する」、売り手のウォンツを「すぐに代金を渡すことで低額で済ませる」といった形で、微妙にウォンツをずらすことができます。
このように競合関係の解消を解消すれば、「すぐに低額の売買代金を支払う」という落とし所で交渉をまとめることができます。
 
・協調の例
人それぞれでニーズは異なりますが、異なるニーズの人々のウォンツを1つの方向にまとめることができると、多くの人を引き付けることができるようになります。
多くの人をひきつければ規模を拡大することができ、規模の経済のメリットを活かすことができるようになります。
 
例えば、対戦要素がある商業ゲームを成功させるためには、多くの人を引き付けて売上を伸ばすことが鍵になります。
娯楽に関して人々のニーズは様々なものがあり、「世界観を楽しみたい」「交流を楽しみたい」「論理的な思考を楽しみたい」といったものがあります。
ここで、「人気キャラクターを用いて適度な運要素がある対戦ゲームを提供する」という商業ゲームを提供した場合、これらのニーズを全て満たし、「その商業ゲームをプレイする」という一つのウォンツにまとめることができます。
このように様々なニーズに対応すれば、多くの人を引きつけ、売り上げを伸ばすことができます。

最強の主張は相手の論理に乗っかった主張である

交渉や議論の場で、相手の主張に対して自分の主張を通したい場面があるとします。
この場合、最強の主張は、相手の論理に乗っかった形で展開される主張です。
 
相手は、何かしらの主張を行う際に、論理を積上げます。
その論理の中で何かしらの問題点があれば相手の主張は崩れるので、相手は相手自身の論理を否定することができません。
そのため、相手の論理の中で自分の主張に取り込むことができる部分があれば、その部分は相手に否定されることがなくなります。
 
例えば、自分が投資商品の販売員だとし、相手が見込客だとします。
そして、相手が、以下のような主張をしたとします。
主張 「私は投資はしない」
論理①「私は心配性なので、リスクは負いたくない」
論理②「投資は金額が減ったり増えたりするので、リスクがある」
論理③「だから、私は、投資せずに全額預金する」
 
ここで、相手の論理の中には、自分の主張に取り込めるものがあります。
それは論理①です。
預金は見た目の金額は減らないものの、物の値段が上がった時(インフレになった時)に、実質的に金額が減るデメリットがあります。
しかし、金へ投資していれば、物の値段が上がった時に金の値段も上がり、金の値段が上がったタイミングで換金することでそれを防ぐことができます。
 
以上のことを踏まえると、以下のように論理を組み立てることで、少なくとも論理①の部分については否定されることがない強固な主張となります。
主張 「あなたは金へ投資した方が良い」
論理①「あなたは心配性なので、リスクは負いたくない」←絶対に否定されない
論理②「預金はインフレの時に価値が目減りするリスクがある」
論理③「だから、あなたは、資産の一部を金で持った方が良い」
 
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なお、心理学には似たような概念として、「一貫性の原理」というものがあります。
「一貫性の原理」とは、「人間は、やると決めたことや人に宣言したことを、一貫性をもってやり遂げようとする傾向がある」という原理です。
「その方が社会的に信用を得やすい」という理由と、「その方が判断にかかるコストを少なくできる」という理由により、このような傾向になりやすい、と言われています。
 
この概念を利用したテクニックもあり、Web上にいくつも記事が公開されています。
ただし、「一貫性の原理」は、論理について説明した概念というよりは、心理的バイアスについて説明した概念であるため、今回の私の記事で説明したテクニックとは少し趣が異なってきます。
論理を組み立てるというよりは、人間のバイアスを使った少しずるいテクニック、という色が強くなります。

自社のポジションを考える思考フレームワーク「ポーターの3つの基本戦略」「コトラーの競争戦略」

自社サービスを展開しているIT企業では、自社のサービス展開に関する戦略を練る必要があります。
優れた戦略を作る上では、それぞれ異なった立場や知見を持つ関係者が集まって、関係者間で思考をまとめるのが有効です。
そして、思考をまとめるのをサポートする手段として、思考フレームワークが数多く発表されています。
 
自社を中心に外部環境を俯瞰するのに適した思考フレームワークとしては「SWOT分析」や「3C分析」といったものがあります。
今回の記事では、外部環境を俯瞰した上で、自社が取るべき戦略を考えるのに適した思考フレームワークである「ポーターの3つの基本戦略」と「コトラーの競争戦略」の2つを挙げていこうと思います。
 
例として、日本に実在するハンバーガーショップを挙げていきます。
(この記事は、思考フレームワークをわかりやすく解説するもので、ハンバーガーショップの具体的な戦略を考察するものではないので、それをご理解された上で記事を参照してください)
 
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【ポーターの3つの基本戦略】
ポーターが提唱した戦略の分類であり、ターゲットが広いか狭いか、他者より低いコストで勝負するか特異性で勝負するか、により、以下の3つの戦略に分ける、というものです。
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どの戦略を採用するかは、市場分析の結果から判断します。
 
例を挙げると、各々の企業の戦略を以下のように分類することができます。
 
・コストリーダーシップ戦略
マクドナルドが採用する戦略。
手軽に食べられる安い外食に対する需要があり、マクドナルドには低コストを実現するグローバルな生産拠点が存在するため、その需要に答えられる。
 
差別化戦略
モスバーガーが採用する戦略。
美味しくて安全な外食に対する需要があり、モスバーガーには高品質と安全性を実現するプロセスが存在するため、その需要に答えらえる。
 
・集中戦略
地元のハンバーガーショップが採用する戦略。
全国規模・世界規模のプロセスに縛られるチェーン店に比べて小回りが効くため、地元の要望に応えられる独自性のあるハンバーガーを提供できる。
 
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コトラーの競争戦略】
コトラーもポーターと同じように、それぞれの企業が置かれた地位に応じて採るべき戦略を提唱しています。
コトラーは、以下の4つの戦略に分類しています。
 
・リーダ
市場においてナンバー1のシェアを誇る企業。
 
・チャレンジャ
リーダに次ぐシェアを保持し、リーダに競争をしかける2・3番手の企業。
 
・ニッチャ
小さいながらも特定の市場で、独自の地位を築いている企業。
 
・フォロワ
リーダやチャレンジャの戦略を模倣することで、市場での地位を維持している企業。
 
例を挙げると、各々の企業の戦略を以下のように分類することができます。
 
・リーダ
低コストを突き詰めたマクドナルドが該当します。
 
・チャレンジャ
品質と安全性で勝負するモスバーガーが該当します。
なお、業界3番手はロッテリアですが、マクドナルド・モスバーガーと店舗数の上で大きく水をあけられており(マクドナルドの1/6、モスバーガーの1/3程度)、マクドナルドやモスバーガーとは明らかに異なる戦略を採っているわけでもないので、今回は後述の「フォロワ」に分類します。
 
・ニッチャ
地元のハンバーガーショップや、高級ハンバーガーに特化した小規模チェーン店が該当します。
 
・フォロワ
ロッテリアフレッシュネスバーガー等の中規模チェーン店が該当します。
これらの企業は、マクドナルドやモスバーガーと同じように、人が集まる場所に全国規模で出店しています。
また、世界規模の生産拠点を持つマクドナルドの低コストを実現できないため、モスバーガーのように品質で勝負している感があります。
 
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このように戦略を分類すると、自社が取るべき戦略が見えてきます。
例えば、モスバーガーのような企業は、マクドナルドと価格競争になるのは避けるべきであり、品質と安全性で勝負するべきである、というのが見えてきます。
 
自社の戦略を確立する上では、自社のコアコンピタンス(自社独自の強み)が何であるか、何をコアコンピタンスにするべきか、というのを考えるのが重要です。
コアコンピタンスが不明確だと、価格競争に巻き込まれやすくなり、価格を下げられる仕組みがあるわけでもないので、利益(労働者目線で言うと待遇)が圧迫されやすくなります。