技術とか戦略とか

IT技術者が技術や戦略について書くブログです。

ブレーンストーミングの問題点と代替案

グループでアイデアを出すための代表的な手法と言えば「ブレーンストーミング」ですが、私の経験上、これは上手く機能しないことが多いです。
もう少し正確に言うと、かけた時間に対するアウトプットが少ないように感じます。
 
これは研究によっても裏付けられているようで、以下のページで説明されています。
 
やっぱりか!ブレインストーミングは時間の無駄という研究結果が話題に  起業の教室

http://tabata-semi.jp/the-purpose-of-brainstorming/

 
簡単にまとめると、以下の2つの理由によりアウトプットが少なくなります。
理由1:個人でアイデアを出す場合よりも出てくるアイデアの数が減る
理由2:ダメなアイデアが出てくる数が増える
 
理由1については、集団思考の問題により説明可能です。
集団で思考する場合、アイデアを出すタイミングを図る必要が出てきますし、進め方次第では集団浅慮(声が大きい人の意見に迎合し多様性がなくなる)や社会的手抜き(他人頼りになり全力を出さなくなる)の影響も出てきます。
集団思考の問題は、ブレーンストーミングに限らず様々な研究で指摘されています。
 
理由2については、将棋での思考プロセスでイメージするとわかりやすいかと思います。
将棋では、より良い手を短時間で見つけ出すために、明らかな悪手は瞬間的に思考から外し、最善手となり得るいくつかの手だけを深読みします。全ての取り得る手を想定していては計算速度が追いつきません。
これは、プロ棋士もそうしていますし、AIもそうしています。
イデア出しも将棋と同じで、良さそうなアイデアもダメそうなアイデアも同じように扱うのは非効率です。明らかにダメそうなアイデアは早々に検討対象から外して、良さそうなアイデアだけを深く検討していくべきです。
理由1の問題を軽減するためにブレーンストーミングでは批判はNGとされますが、そのことが新たな問題を生み出す構造となっています。
 
-------------------------
 
個人的には、アイデアは個人から広く集め、そのアイデアをしかるべき立場・知識・経験・意欲を持った1人~数人で検討する、というのが一番効率が良いと思っています。
イデアを検討する時は、良さそうなアイデアを抽出し、そのアイデアについてより具体的に議論を深める、という進め方が良いと思っています。
議論を深める中でより具体的なアイデアが必要になったら、テーマを絞った上で再びアイデアを広く集めると良いでしょう。
 
例えば、居酒屋チェーンの新事業の案について考えるとします。
まずは、各従業員から広くアイデアを募集します。
そうすると色々夢があるアイデアが出てくると思うので、しかるべき者(経営者や意欲的な従業員、コンサル等)が競争力のありそうな案を直感的にいくつかピックアップし、より具体的な検討を行っていきます。
例えば、競争力のありそうな案として「学生や社会人に向けてランチの時間に弁当販売する」という案が出たとした場合、より具体的な検討をしていくと「どこで売り出すのか」「どのように宣伝するのか」といった新たな検討事項が出てきます。
その検討事項についてアイデアがたくさん欲しくなった場合に、「どこで弁当を売り出すか」「どのように宣伝するのか」といったより具体的なテーマで各従業員からアイデアを募集します。
と、このように、「広くアイデア募集→数人で検討→広くアイデアを募集→…」を繰り返し、徐々に具体化していくイメージです。
 
将棋に例えると、「広くアイデア募集」は「盤面を見落とさないためのサーチ」に相当し、「数人で検討」は「絞り込みと深読み」に相当する、というイメージです。
 
ブレーンストーミングでワイワイ検討し夢を共有することがチームビルディングに繋がる、という意見もありますが、それであれば通常業務での声かけやキックオフミーティング、飲み会に代表されるイベント等、他にもやり方はあります。
また、結果を出す必要があるのであれば、どこかで必ずシビアな判断をせざるを得なくなる時が来ます。好きに夢を語っていれば良いという考えだと、夢と現実の落差でモチベーションを失う可能性もあると思っています。実際に、ブレーンストーミングを採用しているプログラムでは「ブレーンストーミングの時が一番楽しかった」という意見を何回か聞いたことがあります。
(逆に言うと、結果を出す必要がないブレーンストーミングであれば、チームビルディングの手段として有効かもしれません。菓子をつまみながら夢を語り合うような感じで。)