技術とか戦略とか

IT技術者が技術や戦略について書くブログです。

ニーズとウォンツを意識することの重要性

「ニーズ」「ウォンツ」とはマーケティング用語であり、人間が何かを求める時の行動を分類したものです。
それぞれ、以下の意味で使われます。
ニーズ …生活を送る上で感じる満ち足りない状態
ウォンツ…ニーズを満たすための具体的な手段
 
例えば、「本棚を作るためにドリルを求める」という行動については、ニーズとウォンツをそれぞれ以下のように分類できます。
ニーズ …木の板を加工して本棚を作っているが、穴が無いために組み付けができない
ウォンツ…穴を開けるためのドリルが欲しい
 
人間の行動を「ニーズ」と「ウォンツ」に分類することで、効率的な戦略を探しやすくなることがあります。
例えば、以下のような例が挙げられます。
 
マーケティングの例
観測しやすいのは具体的なウォンツですが、ここに着目してしまうと競争に巻き込まれやすくなります。
しかし、裏の目的であるニーズに着目すると、競争を避けやすくなります。
 
例えば、婚活市場では、女性は年収の高さを男性に求めることが多いです。
男性側の視点では、年収の高さの勝負を苦しく感じる人が多いと思います。
そこで、「年収の高さを求める」というウォンツの背景にあるニーズを考えてみると、「安定した結婚生活を送りたい」というのがニーズであることが多いです。
このニーズに着目し、堅実さをアピールすることで、年収の高さの勝負を避けやすくなる可能性があります。
「年収」のようにわかりやすい数字が欲しいのであれば、「年間の貯蓄額」をアピールすると良いかもしれません。
 
・交渉の例
交渉時にお互いのウォンツが競合していると、お互いに奪い合いの関係になり、win-loseになったり交渉がまとまらなくなったりして、お互いに利得を得ることができなくなります。
そこで、ニーズに着目してウォンツをずらし、競合を解消すれば、交渉がまとまりお互いに利得を得ることができるようになります。
 
例えば、家の売買では、高く売りたい売り手と安く買いたい買い手でウォンツが競合しがちです。
高額で売買すれば買い手が損しますし、低額で売買すれば売り手が損します。
そこで、お互いの状況からニーズを考えることで、お互いのウォンツをずらして競合関係を解消できる場合があります。
例えば、売り手のニーズが「早く資金を手に入れて次の家を購入するための頭金に回したい」、買い手のニーズが「手元にある老後資金をなるべく溶かさずに家を買いたい」である場合、売り手のウォンツを「低額でも良いからすぐに現金化する」、売り手のウォンツを「すぐに代金を渡すことで低額で済ませる」といった形で、微妙にウォンツをずらすことができます。
このように競合関係の解消を解消すれば、「すぐに低額の売買代金を支払う」という落とし所で交渉をまとめることができます。
 
・協調の例
人それぞれでニーズは異なりますが、異なるニーズの人々のウォンツを1つの方向にまとめることができると、多くの人を引き付けることができるようになります。
多くの人をひきつければ規模を拡大することができ、規模の経済のメリットを活かすことができるようになります。
 
例えば、対戦要素がある商業ゲームを成功させるためには、多くの人を引き付けて売上を伸ばすことが鍵になります。
娯楽に関して人々のニーズは様々なものがあり、「世界観を楽しみたい」「交流を楽しみたい」「論理的な思考を楽しみたい」といったものがあります。
ここで、「人気キャラクターを用いて適度な運要素がある対戦ゲームを提供する」という商業ゲームを提供した場合、これらのニーズを全て満たし、「その商業ゲームをプレイする」という一つのウォンツにまとめることができます。
このように様々なニーズに対応すれば、多くの人を引きつけ、売り上げを伸ばすことができます。

最強の主張は相手の論理に乗っかった主張である

交渉や議論の場で、相手の主張に対して自分の主張を通したい場面があるとします。
この場合、最強の主張は、相手の論理に乗っかった形で展開される主張です。
 
相手は、何かしらの主張を行う際に、論理を積上げます。
その論理の中で何かしらの問題点があれば相手の主張は崩れるので、相手は相手自身の論理を否定することができません。
そのため、相手の論理の中で自分の主張に取り込むことができる部分があれば、その部分は相手に否定されることがなくなります。
 
例えば、自分が投資商品の販売員だとし、相手が見込客だとします。
そして、相手が、以下のような主張をしたとします。
主張 「私は投資はしない」
論理①「私は心配性なので、リスクは負いたくない」
論理②「投資は金額が減ったり増えたりするので、リスクがある」
論理③「だから、私は、投資せずに全額預金する」
 
ここで、相手の論理の中には、自分の主張に取り込めるものがあります。
それは論理①です。
預金は見た目の金額は減らないものの、物の値段が上がった時(インフレになった時)に、実質的に金額が減るデメリットがあります。
しかし、金へ投資していれば、物の値段が上がった時に金の値段も上がり、金の値段が上がったタイミングで換金することでそれを防ぐことができます。
 
以上のことを踏まえると、以下のように論理を組み立てることで、少なくとも論理①の部分については否定されることがない強固な主張となります。
主張 「あなたは金へ投資した方が良い」
論理①「あなたは心配性なので、リスクは負いたくない」←絶対に否定されない
論理②「預金はインフレの時に価値が目減りするリスクがある」
論理③「だから、あなたは、資産の一部を金で持った方が良い」
 
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なお、心理学には似たような概念として、「一貫性の原理」というものがあります。
「一貫性の原理」とは、「人間は、やると決めたことや人に宣言したことを、一貫性をもってやり遂げようとする傾向がある」という原理です。
「その方が社会的に信用を得やすい」という理由と、「その方が判断にかかるコストを少なくできる」という理由により、このような傾向になりやすい、と言われています。
 
この概念を利用したテクニックもあり、Web上にいくつも記事が公開されています。
ただし、「一貫性の原理」は、論理について説明した概念というよりは、心理的バイアスについて説明した概念であるため、今回の私の記事で説明したテクニックとは少し趣が異なってきます。
論理を組み立てるというよりは、人間のバイアスを使った少しずるいテクニック、という色が強くなります。

自社のポジションを考える思考フレームワーク「ポーターの3つの基本戦略」「コトラーの競争戦略」

自社サービスを展開しているIT企業では、自社のサービス展開に関する戦略を練る必要があります。
優れた戦略を作る上では、それぞれ異なった立場や知見を持つ関係者が集まって、関係者間で思考をまとめるのが有効です。
そして、思考をまとめるのをサポートする手段として、思考フレームワークが数多く発表されています。
 
自社を中心に外部環境を俯瞰するのに適した思考フレームワークとしては「SWOT分析」や「3C分析」といったものがあります。
今回の記事では、外部環境を俯瞰した上で、自社が取るべき戦略を考えるのに適した思考フレームワークである「ポーターの3つの基本戦略」と「コトラーの競争戦略」の2つを挙げていこうと思います。
 
例として、日本に実在するハンバーガーショップを挙げていきます。
(この記事は、思考フレームワークをわかりやすく解説するもので、ハンバーガーショップの具体的な戦略を考察するものではないので、それをご理解された上で記事を参照してください)
 
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【ポーターの3つの基本戦略】
ポーターが提唱した戦略の分類であり、ターゲットが広いか狭いか、他者より低いコストで勝負するか特異性で勝負するか、により、以下の3つの戦略に分ける、というものです。
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どの戦略を採用するかは、市場分析の結果から判断します。
 
例を挙げると、各々の企業の戦略を以下のように分類することができます。
 
・コストリーダーシップ戦略
マクドナルドが採用する戦略。
手軽に食べられる安い外食に対する需要があり、マクドナルドには低コストを実現するグローバルな生産拠点が存在するため、その需要に答えられる。
 
差別化戦略
モスバーガーが採用する戦略。
美味しくて安全な外食に対する需要があり、モスバーガーには高品質と安全性を実現するプロセスが存在するため、その需要に答えらえる。
 
・集中戦略
地元のハンバーガーショップが採用する戦略。
全国規模・世界規模のプロセスに縛られるチェーン店に比べて小回りが効くため、地元の要望に応えられる独自性のあるハンバーガーを提供できる。
 
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コトラーの競争戦略】
コトラーもポーターと同じように、それぞれの企業が置かれた地位に応じて採るべき戦略を提唱しています。
コトラーは、以下の4つの戦略に分類しています。
 
・リーダ
市場においてナンバー1のシェアを誇る企業。
 
・チャレンジャ
リーダに次ぐシェアを保持し、リーダに競争をしかける2・3番手の企業。
 
・ニッチャ
小さいながらも特定の市場で、独自の地位を築いている企業。
 
・フォロワ
リーダやチャレンジャの戦略を模倣することで、市場での地位を維持している企業。
 
例を挙げると、各々の企業の戦略を以下のように分類することができます。
 
・リーダ
低コストを突き詰めたマクドナルドが該当します。
 
・チャレンジャ
品質と安全性で勝負するモスバーガーが該当します。
なお、業界3番手はロッテリアですが、マクドナルド・モスバーガーと店舗数の上で大きく水をあけられており(マクドナルドの1/6、モスバーガーの1/3程度)、マクドナルドやモスバーガーとは明らかに異なる戦略を採っているわけでもないので、今回は後述の「フォロワ」に分類します。
 
・ニッチャ
地元のハンバーガーショップや、高級ハンバーガーに特化した小規模チェーン店が該当します。
 
・フォロワ
ロッテリアフレッシュネスバーガー等の中規模チェーン店が該当します。
これらの企業は、マクドナルドやモスバーガーと同じように、人が集まる場所に全国規模で出店しています。
また、世界規模の生産拠点を持つマクドナルドの低コストを実現できないため、モスバーガーのように品質で勝負している感があります。
 
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このように戦略を分類すると、自社が取るべき戦略が見えてきます。
例えば、モスバーガーのような企業は、マクドナルドと価格競争になるのは避けるべきであり、品質と安全性で勝負するべきである、というのが見えてきます。
 
自社の戦略を確立する上では、自社のコアコンピタンス(自社独自の強み)が何であるか、何をコアコンピタンスにするべきか、というのを考えるのが重要です。
コアコンピタンスが不明確だと、価格競争に巻き込まれやすくなり、価格を下げられる仕組みがあるわけでもないので、利益(労働者目線で言うと待遇)が圧迫されやすくなります。

自社を中心に外部環境を俯瞰する思考フレームワーク「SWOT分析」「3C分析」

自社サービスを展開しているIT企業では、自社のサービス展開に関する戦略を練る必要があります。
優れた戦略を作る上では、それぞれ異なった立場や知見を持つ関係者が集まって、関係者間で思考をまとめるのが有効です。
そして、思考をまとめるのをサポートする手段として、思考フレームワークが数多く発表されています。
 
今回の記事では、自社を中心に外部環境を俯瞰するのに適した思考フレームワークである、「SWOT分析」と「3C分析」について、紹介していこうと思います。
例として、地方銀行向けにレガシーな機関システムを広く提供している企業を挙げます。
 
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SWOT分析
SWOT分析とは、経営環境を分析するために、内部要因(自社)の強み(Strength)・弱み(Weakness)と外部要因(市場)の機会(Opportunity)・脅威(Threaten)を表に書き出す手法です。
 
例としては以下の通りです。

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【3C分析】
3C分析の「3C」とは、「Company(自社)」「Competitor(競合)」「Costomer(顧客(市場))」の頭文字を取ったもので、この3者について分析することで経営環境を分析する、という手法です。
 
例としては以下の通りです。
 
■自社
地方銀行でも手が出しやすい価格でサービスを提供している
地方銀行の業務に関する独自のノウハウを持っている
 
■競合
地方銀行向け市場に参入しようとする競合他社は今の所は少ない
都市銀行向け市場は他社に既に抑えられてしまっている
パッケージソフトやローコードを用いられた場合はより安価にサービス提供される
 
■顧客(市場)
地方銀行には自社サービスを使ってもらえるが、統廃合で銀行の数が減りつつある
都市銀行は既に自社独自のサービスを抱えている
地方銀行都市銀行に比べて地元密着であり、都市銀行ほど保守的な体質でもない
 
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このように状況を整理すると
「ジリ貧の市場で価格競争をしている」
という危うい現状が見えてくると思います。
 
この現状を抜け出すためには、先端ITを用いて地方銀行の競争力を向上させることが有効です。
地元に特化したサービスで地元での顧客を増やしたり、先進的なサービスで都市部の顧客を増やしたりできれば、地方銀行の競争力を向上させることができます。
 
…このような判断を導きやすくするのが、「SWOT分析」「3C分析」という思考フレームワークです。
思考フレームワークの使い方が重要であるため、思考フレームワークを使ったからと言って適切な判断ができるわけではありませんが、関係者が集まって協議する上で役に立つでしょう。

クリティカルパスとは

この記事は、以前に投稿した下記の記事の焼き直しです。
 
情報処理技術者試験対策「クリティカルパス
https://akira2kun.hatenablog.com/entry/2018/07/08/184908
 
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この記事では、クリティカルパスの説明とその重要さを説明していきます。
 
クリティカルパスの用語説明と重要性】
クリティカルパスとは、プロジェクトを予定通り進める上で最も重要となる作業のことです。
具体的に言うと、少しでも遅れるとプロジェクト全体が遅延する作業のことを指します。
 
プロジェクトを進行する上では様々な作業が発生しますが、遅延してもリカバリーが効く作業と、クリティカルパスとなる作業が存在します。
プロズエクトの遅延を防ぐためには、クリティカルパスとなる作業に対して重点的に遅延対策をすることが重要になりますし、遅延対策を効率的に行う上ではクリティカルパスの特定が欠かせません。
 
クリティカルパスの例】
例えば、「自動発注機能」を開発するプロジェクトを考えます。
 
「自動発注機能」は「在庫確認プログラム」と「需要予測プログラム」と「発注送信プログラム」の3つのプログラムで成り立ち、プログラム開発後のテストも必要だとします。
そして、以下の作業が発生するとします。
 
①在庫確認プログラム 7人日
②需要予測プログラム 10人日
③発注送信プログラム 5人日
④テスト 21人日
 
①②③は並行作業可能でそれぞれ1名、④の作業開始は①②③の3つの作業の終了が前提で3名で作業をするとします。
 
以上の前提の場合、このプロジェクトは17日で完了する予定であり、作業の流れを整理すると以下の図のようになります。

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この場合、クリティカルパスは②と④になります。
①と③はクリティカルパスではありません。
例えば、①の作業で3日完了が遅れても②の作業と同時に終わるので、全体のスケジュールに遅延は発生しません。
また、③の作業の開始が5日遅れても②の作業と同時に終わるので、全体のスケジュールに遅延は発生しません。
しかし、②や④の作業は、予定通りに作業が進まなければ、全体のスケジュールが遅延します。
 
クリティカルパスの作業については、重点的な遅延対策が必要になります。
例えば、こまめに進捗確認して遅延をすぐに検知できるようにする、遅延を引き起こすリスクを前もって対策する(例えば、難易度が高い部分だけスキルが高い要員をヘルプで割り当てる)、要員の作業調整を入念に行う、といった対策が考えられます。
このような遅延対策をピンポイントで行うために、クリティカルパスを特定することが重要になります。

サクラエディタのマクロで大量のコマンドを実行した場合の予期せぬ挙動

この記事は、以下の2記事をまとめたものになります。
 
サクラエディタのマクロ(置換処理記述)をバッチから並列実行すると処理が競合する
https://akira2kun.hatenablog.com/entry/2019/03/11/234403
 
サクラエディタのマクロに大量(500以上)のコマンドを記述すると一部コマンドが実行されなくなる(推測)
https://akira2kun.hatenablog.com/entry/2019/03/12/231720
 
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サクラエディタの Ver2.2.0.1 にて、マクロで大量の処理を行った場合に、以下の2つの事象が発生することを確認しています。
1.サクラエディタのマクロをコマンドラインから並列実行すると処理が競合する
2.サクラエディタのマクロに数百以上のコマンドを記述すると一部コマンドが実行されなくなる可能性がある
 
大量の処理が必要な場合は、C#Java等のプログラミング言語で処理を実装することをお勧めします。
 
以下、事象の詳細です。
 
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【事象1】
■事象名
サクラエディタのマクロをコマンドラインから並列実行すると処理が競合する
 
■事象内容
サクラエディタのマクロは、コマンドラインから実行することができる。
また、コマンドライン実行は、複数のプロセスで行うこともできる。
しかし、複数のプロセスでこれを行うと、お互いのプロセスで処理が競合し、あるプロセスの処理が他のプロセスの処理に影響を与えてしまう。
 
■再現手順
1.以下のように、1000個の置換処理をマクロに記載する。
S_ReplaceAll('hoge1000', 'fuga1000', 62); // すべて置換
S_ReplaceAll('hoge999', 'fuga999', 62); // すべて置換
S_ReplaceAll('hoge998', 'fuga998', 62); // すべて置換



S_ReplaceAll('hoge3', 'fuga3', 62); // すべて置換
S_ReplaceAll('hoge2', 'fuga2', 62); // すべて置換
S_ReplaceAll('hoge1', 'fuga1', 62); // すべて置換
S_ReDraw(0); // 再描画
FileSave( ); // 上書き保存
WinClose( ); // 閉じる
 
2.1で作成したマクロを以下の記事の要領でバッチから起動可能にする。
サクラエディタのマクロをバッチファイルで複数ファイルに対して実行 
https://cyzennt.co.jp/blog/2019/04/13/%e3%82%b5%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%81%ae%e3%83%9e%e3%82%af%e3%83%ad%e3%82%92%e3%83%90%e3%83%83%e3%83%81%e3%83%95%e3%82%a1%e3%82%a4%e3%83%ab%e3%81%a7%e8%a4%87%e6%95%b0/
 
3.処理対象のファイルを用意する
workフォルダ内に、以下のように置換対象の文字を含むファイルを格納する。
hoge1000
hoge999
hoge998



hoge3
hoge2
hoge1
 
4.2~3のフォルダ構成を複数作成する。
tmpフォルダをコピーしtmp2フォルダを作成する。
(バッチファイルの1行目・5行目の記述もフォルダ名に合わせて変更する)
 
5.4の各々のフォルダで同時にバッチファイルを起動させる。
 
6.workフォルダ内のファイルを開き、競合の発生を確認する。
(実行例)
fuga1000
fuga999
fuga998



fuga3
fuga2
fuga1
 
とならず、「hoge951」が「fuga920」になる等不正な結果になる。
 
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【事象2】
■事象名
サクラエディタのマクロに数百以上のコマンドを記述すると一部コマンドが実行されなくなる可能性がある
 
■事象内容
サクラエディタのマクロに600以上のコマンドを記述し、最後に"WinClose( );"を記述した場合、"WinClose( );"が実行されない場合があることを確認した。
コマンド数が多ければ多いほど、PCのスペックが高ければ高いほど、事象が発生する確率が高いと思われる。
 
参考までに、下記のスペックのPCの場合、コマンド数1003で事象が発生することを確認している。
 
・OS:Windows8.1 64bit
・CPU:Inter(R) Core(TM) i5-4210U CPU @ 1.70GHz 2.40GHz
・メモリ:8.00GB
・ディスク:SSD 128GB
 
■再現手順
前述のスペックのPCの場合の再現手順である。
 
1.1003個のコマンドをマクロに記述する。
S_ReplaceAll('hoge1000', 'fuga1000', 62); // すべて置換
S_ReplaceAll('hoge999', 'fuga999', 62); // すべて置換
S_ReplaceAll('hoge998', 'fuga998', 62); // すべて置換



S_ReplaceAll('hoge3', 'fuga3', 62); // すべて置換
S_ReplaceAll('hoge2', 'fuga2', 62); // すべて置換
S_ReplaceAll('hoge1', 'fuga1', 62); // すべて置換
S_ReDraw(0); // 再描画
FileSave( ); // 上書き保存
WinClose( ); // 閉じる
 
2.1で作成したマクロを以下の記事の要領でバッチから起動可能にする。
サクラエディタのマクロをバッチファイルで複数ファイルに対して実行 
https://cyzennt.co.jp/blog/2019/04/13/%e3%82%b5%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%a8%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%bf%e3%81%ae%e3%83%9e%e3%82%af%e3%83%ad%e3%82%92%e3%83%90%e3%83%83%e3%83%81%e3%83%95%e3%82%a1%e3%82%a4%e3%83%ab%e3%81%a7%e8%a4%87%e6%95%b0/
 
3.処理対象のファイルを用意する
workフォルダ内に任意のファイルを格納する。
 
4.2で作成したバッチを起動する
 
5.サクラエディタで開かれた3のファイルが"WinClose( );"により閉じられないことを確認する。

IT業界におけるメンタルヘルス対策

IT業界は、メンタルヘルス不調が出やすい業界であると言われます。
メンタルヘルス不調者が出てしまうと事業に悪影響がありますし、何より心情的に心が痛むものがあります。
 
この記事では、IT業界の特殊な背景と、IT業界でのメンタルヘルス対策について、簡単に書いていきたいと思います。
デリケートな話題ですので、特定の人のメンタルヘルスを悪化させる可能性がある内容は極力控え、客観的な記述を心がけます。
 
1.IT業界でのメンタルヘルス不調の多さ
2020年に「過去1年間におけるメンタルヘルス不調による連続1か月以上の休業をした労働者及び退職者割合(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&query=%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B9%E4%B8%8D%E8%AA%BF&sort=year_month%20desc&layout=dataset&stat_infid=000032177262&metadata=1&data=1)」という政府統計が取られました。
この統計によると、1年間でメンタルヘルス不調により1か月以上休業する社員の割合が、インターネット附随サービス業は1.5%、通信業は1.1%、情報サービス業は0.9%あるとされています。100人いれば1人はメンタルヘルス不調により長期休暇を取っているという計算です。
(職場によってはこれより高いこともありますし、長期休暇を取らないまでもメンタルヘルスが不調のまま踏ん張っている社員がいることも予想されます)
これは全業界で1位・2位・3位であり、平均の0.4%と比べるとその高さがわかると思います。
 
2.IT業界にメンタルヘルス不調が多い理由
IT業界に限らず、一般的に「仕事の責任が重くプレッシャーを感じる」「仕事の裁量が少なく自分の仕事を自分でコントロールできない」といった環境では、メンタルヘルス不調が発生しやすくなります。
勿論、各種ハラスメントが横行している職場の場合は、それはメンタルヘルス不調を引き起こす主因になります。
そして、IT業界特有の理由としては、以下のようなものが考えられます。
 
■不規則な勤務が多い仕事である
 IT業界では、長時間残業や深夜作業・休日作業を余儀なくされることがあります。
 開発では納期前に「デスマーチ」と呼ばれる追い込みを強いられることがあります。
 36協定の範囲内でも、1ヶ月100時間弱の長時間残業を強いられる可能性があります。
 また、保守・運用では、システムの都合に合わせた勤務が必要になることがあります。
 システムがサービス時間外となる時間帯でないとできない作業があるためです。
 そのため、深夜作業や休日作業が必要になることがあります。
 更に、緊急のシステム障害の場合は、そのような勤務が予定外で発生します。
 このような不規則な勤務は、プライベートの充実や睡眠時間の確保を難しくさせます。
 当然、メンタルヘルス不調を抱えるリスクは高まります。
 
■孤独感を感じやすい仕事である
 IT業界はPCの前に座っていることが多い仕事であり、直接会話する機会は少ないです。
 また、IT業界に多い客先常駐という形態は、孤独感を強める要素になり得ます。
 客先常駐では自社の社員が居ない・少ないという環境で仕事をするため、
 良く知っている人とのつながりを感じながら仕事をするという形にはなりにくいです。
 コロナ禍でIT業界に浸透したテレワークも、孤独感を強める要素になり得ます。
 テレワークでは非公式のコミュニケーションが発生しにくいため、
 人となりを知りにくくなったり、どう思われているのかわかりにくくなったりします。
 人との繋がりを感じにくく孤独感があるというのは、メンタルヘルスにマイナスです。
 
■褒められることが少ない仕事である
 特に保守・運用に言えることですが、この仕事は縁の下の力持ちな面があります。
 また、システムは動いて当たり前と思われやすいです。
 そのため、システム稼働を維持していたとしても、褒められることは少ないです。
 そして、システム障害を発生させてしまうと怒られてしまいます。
 仕事の中で自己肯定感を感じることが少ないので、メンタルに厳しい仕事と言えます。
 
■変化が激しい業界である
 IT業界で使われる技術は変化が早く、次々と新しい技術が生まれます。
 また、若年者は知識の習得が早い上、教育機関で新技術を学んでくることもあります。
 そのため、現場で最前線に立ち続けるには勉強の継続が欠かせません。
 このことは余暇の時間を減らすことになりますし、プレッシャーにも悩まされます。
 出世やステップアップにより、現場仕事から管理側の仕事へ移行することもあります。
 この場合は、技術の変化に悩まされることは少なくなります。
 しかし、仕事内容が変わることで、人によってはやりがいを失うことがあります。
 
メンタルヘルス不調を抱えやすい社員が多い
 IT業界の技術者には、高い論理的思考力が求められます。
 また、ある種の発達障害の人は論理的思考力が比較的高いとされています。
 そのため、発達障害の人にお勧めの職業として技術者が挙げられることが多いです。
 (実際、従事者も比較的多いと思います)
 しかし、発達障害の人は人とのコミュニケーションに難を抱えることが多いです。
 そのことにより、メンタルヘルス不調を併発することが少なくありません。
 コミュニケーションが少ないIT業界といえども、チームワークは必要です。
 職場に発達障害への理解が無い場合は、メンタルヘルス上リスクとなります。
 発達障害でないとしても、メンタルヘルス上のリスクが高い性格が求められます。
 コンピューターを動かす上では論理性が求められ、曖昧さは許されません。
 そのため、完璧主義な性格が求められる面が出てきます。
 しかし、完璧主義は、メンタルヘルス不調のリスクが高い性格でもあります。
 
3.メンタルヘルス不調の影響
メンタルヘルス不調になった社員は、パフォーマンスが悪くなります。
そして、最終的には休職や退職をせざるを得ない状態になります。
(休職・退職があまりにも多い場合、悪評が立ち採用活動が困難になることがあり、最悪の場合は健康被害のために訴訟に発展することもあります)
 
具体的には、メンタルヘルス不調になった社員には以下の症状が発生します。
 
■前兆となる症状
・勤怠が乱れ始める(遅刻や突休をするようになる)
・声のトーンが暗くなる、ネガティブな発言が増える等、明らかに元気がなくなる
・頭痛が増える、風邪を引きやすくなる等、体調不良が増える
 
■IT業界で良く目にする病名
メンタルヘルス不調の病院での診断名は以下の通りです。

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なお、メンタルヘルス不調の症状により通常の就労が困難になった場合、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けるケースもあります。
日常生活を自力で送れるが就労が困難、という程度の場合は、精神障害2~3級となります。
 
メンタルヘルス不調の治療と経過
メンタルヘルス不調を病院で治療する場合、治療で即効性が高いのは投薬です。
しかし、投薬治療には副作用もあり、眠気といった仕事のパフォーマンスを落とす副作業もあります。
また、病院から診断書をもらい休職を余儀なくされるような強い症状が現れた場合、休職期間を終えて復帰しても再び休職してしまう可能性が少なくありません。復帰を急ぐ場合は特にその傾向が強くなります。
仕事の中で強いストレスを感じる経験をしてしまっており、仕事をする中でその経験が想起されるので、周囲の理解とサポートがなければ復帰は難しいものになります。
 
4.メンタルヘルス不調の対策
一般的に、メンタルヘルス不調への対策は以下のようなものになります。
 
■セルフケアの推進
研修を通して、各々の社員に以下の知識を身につけさせることで、メンタルケアを各々の社員自身で行うことができるようにし、メンタルヘルス不調の減少に期待できます。
研修で伝える内容は、厚生労働省医療機関等の信頼できる機関が発信する情報に準ずることが望ましいです。
・ストレスやメンタルヘルスに関する正しい知識
・ストレスマネジメントやメンタルケアの方法
 
■職場でのメンタルヘルス対策の実施
メンタルヘルス不調を招くような要素を取り除いたり緩和したりする対策を職場で行うことも重要です。
例えば、深夜の労働時間が長くなりすぎないように勤務時間をシフトするのは良い対策です。
ただし、良かれと思った対策に効果が無い/逆効果となることも良くあるので注意が必要です。少なくとも、他人の気持ちがわかることを前提とした対策は厳禁です。見た目や口先だけで他人の内面を知ることは極めて困難ですし、本当にメンタルヘルス不調の場合は自尊感情が損なわれているケースが多くデリケートな対応が必要だからです。
コミュニケーションを活発にしたり本音を聞き出したりするためにメンタルヘルス不調対策のつもりで飲み会に誘う、というのは日本の職場では見られがちですが、飲み会でストレスを感じるやりとりがされたり睡眠時間が削られたりして逆効果になる可能性があります。
職場で適切な対策を行うためには、上長にメンタルヘルスに関する正しい知識が必要です。
 
■会社全体でのメンタルヘルス対策の実施
メンタルヘルスは敏感で難しい分野ですので、職場での自助努力だけではなく、外部の専門家や社内の専門担当者、例えば、産業医や衛生管理者、保健師、人事・労務担当者が支援することも重要です。
全社的な施策や、長時間労働者へのヒアリング、職場でのメンタルケアのサポート、外部機関との連携等は、このようなポジションの人物でないと実施が難しいです。
 
■社外機関を用いたメンタルヘルス対策の実施
厚生労働省中央労働災害防止協会、商工会議所、健康保険組合といった社外の機関もメンタルヘルス対策を推進しています。
具体的には、産業保健情報の提供、健康相談窓口の開設、アドバイザーや講師の個別訪問、といった活動に取り組んでいます。
社内だけではリソースやノウハウが足りない場合は、こういった社外機関によるサポートを得ることも重要でしょう。
下記のような助成金制度を利用することもできます。

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