技術とか戦略とか

IT技術者が技術や戦略について書くブログです。

マニュアル対応にならないようにするために心がけるべきこと

サービス提供者、特に接客業では、「マニュアル対応」が批判されることがあります。
「マニュアル対応」が批判される理由としては、以下の二点の理由により顧客の期待通りのサービスを行えない可能性があるからだと思っています。
 
・マニュアルはサービス提供者側の見えない都合を顧客に押し付けるものである
・マニュアルは性悪説の観点で労働者を縛り臨機応変な対応を妨げるものである
 
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ここで、マニュアル対応が批判された例として、「おにぎりを買ってコンビニで割り箸を要求したら断られた」という例を挙げていきたいと思います。
「あらかじめ買っておいたカップ麺を食べたいが、箸を忘れてしまったので、コンビニでおにぎりを買って割り箸をもらおうとしたら、おにぎりには割り箸はつけられないと言われてくれなかった」という批判であり、具体的には以下のような批判となっています。
 
コンビニでお箸を要求したら断られました  生活・身近な話題  発言小町  読売新聞

https://komachi.yomiuri.co.jp/t/2013/0904/615599.htm

 
これについては、批判する側の気持ちは正直わかります。
 
コンビニでは何に割り箸をつけて何に割り箸をつけないのかが不明瞭です(サービス提供者側の見えない都合)。
そのため、弁当やカップ麺に割り箸がついてきたら、「何か食べ物を買ったら割り箸をつけてくれる」と顧客が誤解する可能性があります。
個人差はあるものの、弁当やカップ麺以外でも割り箸を使うケースは考えられます。
googleで「おにぎり 箸で食べる」で検索すると箸でおにぎりを食べる人がいることがわかりますし、「汚れた手でキーボードに触りたくない」という理由でスナック菓子を箸で食べながら作業する人も見たことがあります。
そのため、「おにぎりやスナック菓子でも言えば割り箸をくれる」と顧客が誤解してもおかしなことではありません。
このような誤解が発生すると、実際に提供できるサービス以上のサービスを顧客側が期待することに繋がります。
 
また、労働者側から見れば、マニュアルにより「おにぎりに割り箸はつけられません」の一点張りするしかなくなってしまうというのも問題です(臨機応変な対応を妨げる)。
最低限、顧客の要望に応えられていないことに気付いて本心から謝罪するべきなのですが、マニュアルがあると労働者は「マニュアル通りに働けば良い」という意識になりがちなため、その気付きすら妨げます。
仮に気付けたとしても、サービス提供者側の見えない都合を説明した上で「1回だけサービスで割り箸をつける(数円ながらサービス提供者側にダメージは出る)」「割り箸を1本5円か10円で売る(今回のケースでは顧客が本当に欲しいのは割り箸なので、渋々払ってくれる可能性が高い)」といった臨機応変な対応をすることができず、マニュアル通りの対応に終始するしかありません。
 
その結果、顧客から見れば「期待したサービスを受けられなかった」という思いが残り、顧客満足度が下がったりクレームにつながったりします。
 
接客業には本当にどうしようもないクレームもあるにはあるのですが、このケースについてはサービス提供者側ができることがまだまだ残されているケースだと思います。
見えない都合があるならそれを可視化するべきです。弁当やカップ麺を割り箸と一緒に梱包すれば何に割り箸がついてくるのか一目瞭然ですし、それがコストや陳列スペース的に難しいのであればシールを貼って割り箸がついてくる商品を可視化する手もあります。
また、いくら可視化に勤めたとしても、誤解から過剰なサービスを顧客が期待してしまうことを完全に防ぐことはできないので、労働者側が臨機応変な対応を行えるようにする必要もあります。
ただし、臨機応変な対応を行うためには、労働者側が自分のサービスを理解した上で顧客の要望を汲み取る必要があるので、労働者側に前向きな姿勢が求められます。労働者を管理する側も、労働者を信頼した上で、必要な教育を適宜行う必要があります。
 
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私も、今の現場では社内の開発者向けのサービス(ソースコードを規約に沿った形に変換)に関わっているのですが、「サービス提供者側の都合を可視化する」「顧客の要望を汲み取り臨機応変な対応を行う」という2点は忘れないようにしています。
具体的には、サービスに過大な期待を持たれないように依頼書のフォーマットを工夫したり適宜必要な情報展開を行ったりする、「変換されたソースコードが読みにくい」「変換後ソースを開発者が再修正しなければならなくなるケースがある」といったことがあればその場は臨機応変な対応で切り抜けた上で変換ツール修正で改善する、といったことを行っています。
少なくとも、期待通りのサービスを提供できなかった時は申し訳ないという気持ちは持っています。
 
サービスを提供するからには、少しでも要望に応えられるように努力していきたいです。