技術とか戦略とか

証券レガシーシステムを8年いじってから転職した普通の文系SEによるブログ。技術のみではなく趣味の戦略考察についても。

麻雀未経験者が麻雀の戦略を分析してみた

会社で麻雀をプレイする方が何名かいらっしゃるようなので、麻雀における戦略を分析してみました。
ちなみに、私はこの記事を書くまで麻雀のルールも知りませんでした。ルールの確認も、入門サイトを1時間眺めただけです。
というわけで、あくまでも一般論からものを言う記事であることをご了承ください。
ただ、一般論である分、却って仕事や他の趣味の役に立つ記事になっているかもしれません。
 
【麻雀のルール】
「初心者のための麻雀講座-黄金牌を巡る物語」様の「麻雀ルール・麻雀入門」を参照しました。

http://www2.odn.ne.jp/~cbm15900/html/n0.html
 
ゲーム理論からの分析】

  • 相手、選択肢、利得の定義
    ゲーム理論を適用するためには、相手、選択肢、利得を正しく定義する必要がある。
    相手は、3人の人間(自分を含めると4人の人間)を想定する。コンピュータ戦はここでは考察対象外とする。
    選択肢は、一般的にゲーム内で定義された手段(牌を引く、牌を捨てる、ツモあがり、ロンあがり、リーチ、ポン・チー、捨てられた牌を拾ってカン、自分で牌を引いてカン)を想定する。ハウスルールで追加される一般的ではない手段や盤外の手段はここでは考察対象外とする。
    利得は、積算方法や点数評価によって導かれるものとする。例えば、オカや順位ウマがある場合は1位を取った場合の利得が高まり、2位以下を取った場合の利得が低まる。また、単純に順位を競う場合は100点でも良いので相手よりも高い順位を得ることで利得が高まり、点数に応じて何かを行う場合は順位にこだわるよりも点数を少しでも高めることで利得が高まる。
  • 使用する分析方法
    原則として麻雀は交互進行ゲーム(各プレイヤーが交互に意思決定を行う)であるため、ゲーム木による分析が適している。
    (今回の記事ではゲーム木による分析は行わないが、先人による分析ではゲーム木が使われていると予想)
    なお、例外として、他のプレイヤーが捨てた牌を拾う場面(ロンあがり、ポン・チー、捨てられた牌を拾ってカン)では、交互進行ゲームでも同時進行ゲームでもない、いわゆる速いもの勝ちのゲームとなっており、反射神経を鍛えることが重要となる。
  • 期待利得の計算(大方針)
    1局におけるプレイヤーの期待利得を簡単に書くと以下の通りになる。
    (ここで、自分があがる確率をpとする)
     期待利得 = p * 自分が上がった場合に得られる利得 - (1-p) * 相手が上がった場合に失う利得
    ここで、注目するべきなのは、自分が先にあがれば相手があがるのを阻止できるという点である。
    安い役でも良いので自分が先にあがれば、相手が役満であがるのを阻止することができ、利得を失うことを防ぐことができる。
    自分があがればプラスの利得を得られるが相手があがればマイナスの利得となる。この差は大きい。
    更に、自分があがれば次の局では自分が親になるため、次の局の期待利得が高まる。赤ドラがあるルールであれば、安い役でも利得は高まりやすい。
    例外もあるだろうが、基本的には、自分があがる確率を高めることを最優先で考えることが重要になるだろう。
    最初に配られた牌を見て、一番高い確率で(なるべく早く)役を作れる手段を探るのが基本戦術となるだろう。
  • 期待利得の計算(情報の蓄積)
    ドラの牌、自分で拾わなかった捨てられた牌、ポン・チーされた牌は、自分がその局の中で手に入れることができない牌である。
    また、他のプレイヤーがどのような牌を捨てているかによって、相手がどのような役を狙いに行っているのか、つまり相手がどのような牌を持っているのかを推測できるかもしれない。その牌も相手が捨てない限りは手に入れることができない。
    このような情報は、1局が進行するにつれて蓄積される。
    これらの情報は自分があがる確率の計算の精度を高めるのに使える情報である。つまり、1局が進行するにつれて、自分があがる確率をより正確に計算できるということであるし、情報の蓄積に応じて役作りの方針も変えるべきである。
    (この辺の確率計算は、先人の手によって既に細かく行われていると予想)
  • 期待利得の計算(各々の手段の考察)
    次に、各々の手段が期待利得に与える影響の考察である。
    ロンあがりについては、自分が捨てた牌でロンあがりされると大きなマイナスの利得となるため、それをを防ぐ視点で考える必要がある。具体的には、自分が捨てる牌には気を付ける必要がある。相手が捨てた牌と同じ牌を捨てるのが安全策であり、また相手がどのような役を作ろうとしているのかを推測することができれば、その役を作るのに必要な牌を捨てないようにするという策も立てられる。ロンあがりを防ぐことばかりに気を取られると自分が役を作れなくなるが、相手がリーチした場合は気を付けなければならないし、自分があがれそうにない場合はロンあがりされることだけは防ぐ防御的な戦術も必要になるだろう。
    リーチについてはそれ自体が1ハンを持つため、自分があがった時の利得を高めることができる。また、役ができていない場合はリーチ自体が役となるため、自分があがる確率を高める手段ともなる。しかし、リーチしてしまうと自分の手はいじることはできなくなるため、より高い確率で上がれるようにしたりより高い役にしたりすることができなくなり、その意味では自分があがる確率や利得を下げることになる。また、自分の捨てた牌でロンあがりができなくなり、リーチすることで他のプレイヤーが警戒して捨てる牌に気を付けるようにもなるため、ロンあがりが難しくなり、その意味でも自分があがる確率が低くなる。既に役がある場合や役ができそうな場合は、むやみにリーチするべきではないだろう。
    ポン・チーは、自分が上がった時の利得を下げることがある一方、自分が上がる確率を高めることができる。自分が持っている牌の一部を公にしてしまうことで情報を与えてしまうリスクはあるが、なるべく早くあがるという基本方針を考えると、利用した方が良い場面は多いだろう。
    カンは、自分があがる場合の利得を高める一方、相手があがる場合の利得をあげてしまう。このリスクは、自分が子の場合に特に高まる。自分が持っている牌の一部を公にするリスクもある。自分がすぐにあがれそうな場合や自分が親である場合以外は、むやみにするべきではないだろう。
  • 期待利得の計算(利得の敷居値の考察)
    利得は点数に比例するわけではない。利得には敷居値というものがあり、点数がある値を上回ったり下回ったりすると利得が大きく変化する。
    敷居値を考える場合は、積算方法や点数評価を加味する必要がある。順位が重要な意味を持つ場合は、他のプレイヤーの点数が閾値となる。点数自体が重要な意味を持つ場合は、±0が心理的閾値となるだろう(人間は損失を嫌うため、詳しくはプロスペクト理論を参照)。
    一般的に、人間は、現在の点数が敷居値を上回ってる場合は大きく点数を失う可能性があるハイリスクハイリターンな戦術を嫌うようになるし、敷居値を下回っている場合はハイリスクハイリターンな戦術を好むようになる。このような選好にはある程度の合理性もある。相手の思考を読む(どのような役を作ろうとしているのか、捨てる牌に気を付けているのか、等を推測する)上でこのことは軽視できないため、頭の片隅に入れておくと良いだろう。

【ゲームの分類からの分析】

  • 麻雀というゲームの分類
    麻雀をゲームとして分類すると、多人数零和有限不確定不完全情報ゲームであり、交互進行ゲーム(一部例外あり)であり、プレイヤーは個人であり、プレイヤーの利得は基本的に数値化可能(ただしプロスペクト理論が入り込む余地がある)である。
    ゲームの分類に応じて有効な分析手法が変わるので、以下ではこの分類を元にどのような分析手法が有効なのかを探ることとする。
  • 多人数ゲームとしての麻雀
    多人数ゲームでは、一人のプレイヤーに対する集中攻撃が問題になることがある。集中攻撃が可能なゲームではなるべく多人数側に回る若しくは争いに加わらないようにすることが一般的に合理的な手となる。また、キングメイカー問題(1位争いに加われないプレイヤーの行動が1位のプレイヤーを決めてしまう問題)も一般的に発生しやすい問題である。
    しかし、麻雀は他のプレイヤーに干渉できる手段が著しく限定されるため、多人数ゲームと言っても実質的には一人ゲームや二人ゲームに性質が近く、これらの要素は考えなくて良いだろう。
  • 零和ゲームとしての麻雀
    零和ゲームでは、自分の利得が相手の損失になり、相手の利得が自分の損失になる。win-winの状況を作り出すことはできない。
    零和ゲームでは特別な分析手法は必要ないが、このことは頭に入れておくと良いだろう。
  • 有限ゲームとしての麻雀
    有限ゲームは全ての手を洗い出すことができる。そのため、AIによる分析が比較的容易である。
    既に先人の手によってAIによる分析が行われていると思って良いだろうし、AIから知見を得ることも可能だろう。
  • 不確定ゲームとしての麻雀
    麻雀は牌が配られ方に応じてある程度の有利不利が決められてしまう。つまり運が介在する余地があり、不確定ゲームと言える。
    特に有効な分析手法があるわけではないが、計算量が増えてしまうことや、腕の差を逆転されることがあることには注意する必要がある。運(牌の配られ方)に応じて戦術を柔軟に変える必要があることにも注意する必要がある。
  • 不完全情報ゲームとしての麻雀
    自分が持っている牌は自分しか見ることができないため、麻雀は不完全情報ゲームである。
    そのため、前述した通り相手が狙う役を推測する必要がある他、狙う役を推測されることを利用し、高い役が揃いそうな牌の捨て方をして脅しをかける(相手を安い役で早くあがらせて損失を最小限に食い止める)ことも可能だろう。自分があがる確率が低くなるため基本的には有効な戦術ではないが、自分があがれそうにない場合は一考の余地がある。
  • 交互進行ゲームとしての麻雀
    前述した通り、麻雀は基本的には交互進行ゲームであるため、ゲーム木による分析が有効になる。
  • プレイヤーが個人のゲームとして見る麻雀
    麻雀はチームプレイを行うゲームではないため、異なる行動主体を一つにまとめ上げる手法(組織論、集団心理学等)は不要であり、その意味では単純なゲームである。
  • 利得の数値化が可能なゲームとして見る麻雀
    利得は点数という数値化可能な形で与えられ、その点数の扱い方(順位を争うのか、点数自体が重要なのか)もルールによって定義されるため、利得の数値化で頭を悩ませる必要はない。その意味で麻雀は単純なゲームである。
    ただし、プレイヤーは人間であるため、人間の利得の感じ方には気を付ける必要があり、プロスペクト理論等の行動経済学を適用することでより正確な利得分析が可能となる。

ゲームデザインの分析】

  • ゲームデザインの分析の意義
    ゲームは人々を引き付けるようにデザインされている。
    ゲームデザインを分析することで、どのようなプレイヤーがそのゲームを好むのか、そのゲームはどこに魅力があるのか(どのような魅力により上達のモチベーションを高めることができるのか)、といったことを見ることができ、戦略上意味のある知見が得られる場合がある。
  • 麻雀のゲームデザイン
    一般的にゲームデザインは、人々に興味を持たせる世界観と、少しずつ高いハードルを与えて上達の喜びを与え続ける仕組みの二段構えで成り立っている。
    麻雀の世界観は中国の祝い事を表現したものとなっているが、現代日本においては理解が難しい世界観である。それよりも、プレイヤー人口が多く知らない人とも気軽にワイワイ楽しめるゲームであることが、人々を引き付ける世界観としては重要な意味を持つだろう。麻雀は役の多さからルールにある程度の複雑性があり(私見では比較的簡素な商業ゲームに匹敵する複雑性であると感じており)、決して敷居は低くないが、それでもプレイヤー人口が途切れることがないのは、知らない人と楽しめるという魅力があるからだろう。自分に知らない人とゲームを通して交流を図る志向があれば麻雀に興味を持つことができ、また麻雀を楽しむプレイヤーも(少なくとも元々は)そのような志向を持ったプレイヤーが多いということを頭に入れておくと良いだろう。
    ハードルという面では、実力が同程度の者と遊べばその対戦相手がちょうど良いハードルとなり、また運要素が介在するゲームであるため、実力が上の者も決して乗り越えられないハードルではない(逆に、実力が上の者にとっては、実力が下の者が運要素によって下駄をはかされるため、ちょうど良いハードルの高さになる)。運要素が介在すると言っても、大抵の場合は実力が上の者が勝利するため、上達の喜びを阻害するほどのものではない。今では様々な強さを持ったコンピュータも存在する。これらの要素により、初心者から上級者まで、ちょうど良いハードルで上達の喜びを得られるゲームデザインとなっていると言えるだろう。自分が麻雀で実力向上したい場合は、これらのことを頭に入れてちょうど良いハードルを探し、モチベーションを高めると良いだろう。
  • 麻雀の複雑性
    麻雀はルール自体は単純である。しかし、役の多さにより複雑性が出ている。
    役が多いため、自分がどの役で上がるべきなのかの判断が難しくなり、相手がどのような役を揃えようとしているのかを推測することも難しくなる。そもそも、高い役で上がっているのにそれを自分で見落とし安い役としてあがりを宣言することすらある。
    まずは役を覚えることが重要である。そして、自分が持っている牌や場に見える牌からどの役で上がろうとするのが最も効率が良いのかを正確にそして素早く判断できるように練習を積むこと。地力を上げるには、ここが勘所になると考えている。

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今回の記事は以上です。
ルールを1時間で把握しただけ(しかも役については全て見きれていない)にしては長文になってしまいました。
気が向いたら、麻雀を実際にプレイしたり、より深く調べたりしてみたいと思います。